「天気の子」をみて新海誠監督への信頼が爆上がりした

どうもこんにちは。ぬこもやしです。

早速ですが見てきました。新海誠監督のアニメ映画「天気の子」です。



大体3年前に「君の名は。」で大ヒットを飛ばした新海誠監督の最新作です。
君の名は。も面白かったですけど、私は同監督の作品だと「秒速5センチメートル」や「ほしのこえ」で育ったオタクだったので、あーそういう感じになっちゃいました?と斜に構えながら見てました。
さて、今回の「天気の子」はどうだったかというと…まず、ネタバレ無しの感想としては

新海誠監督!!!!!!!!信頼の塊!!!!!!!!!!!!!!

となりました。
というわけで、何がどう信頼だったのか早速いってみましょう。

【注意】
以下の内容には「天気の子」本編のネタバレが多数含まれます。
まだ見ていないという方は、がたがた言わずに劇場に行ってください。あと、パンフは見たあとに買ってください。





























んでは始めます。
ぶっちゃけあらすじとかどうでもいいですよね。
だって、男の子と女の子が出会って、男の子が頑張って女の子を助ける。おしまい。で言い表せちゃいますから。ストーリーはすべて桃太郎にできちゃう理論で行くなら、全部分解が可能です。けど、この作品にはそんな話がどうでも良くなるくらい、様々な要素が詰まってます。

・視覚的な情報とセリフ
まずこの作品明らかに「アニメという媒体の文脈に慣れたオタク向け」だなと思いました。
登場人物の感情は、案外セリフにされません。視覚的な情報で、多分こうなんだろうなと言う推察を普通に要求してきます。
その一方で、新海誠といえば!!!!と言わんばかりの豊かな色彩にあふれるアニメーションは、情報過多でぶっちゃけ死にかけます。
アニメを見るのに慣れてない人、これは大丈夫なんですかね…?
そこらへん、どうすか…?

・前作「君の名は。」との違い
なんだかんだいっても、ここはどうしても取り上げなければならないところだと思うんですよね。私も、見ながらこれめっちゃ考えちゃってましたし。
君の名は。」を見ていて、個人的に「ちょっと???新海誠監督?????」となったのは、徹底してハッピーエンドだった点です。時間を乗り越えて地球規模の災害から町の人々を救っちゃうんですから。そりゃ感動超大作で大衆にウケますよ。でも、斜に構えたオタクは「?????」ってなっちゃったんですよ。なんの代償もなしにそんな結末、あり得るか…?

それに対して「天気の子」はどうだったか。ヒロインの陽菜は、自分を犠牲にすることで、雨がやまない東京に晴れをもたらすことができるのですが…
なんとびっくり。ヒロインの陽菜を救うために、主人公の帆高くんは「東京を水没させます」
おいこら!!!人の地元を水没させるな!!!あ、でも田端のあたりは生きてる!!!まあたしかにあの辺高台だし!!!って顔になってました。

事実として、東京が水没したという点だけを見るのはナンセンスなので、もうちょっと掘っていきます。
この作品の偉いところは、そこに至るまでの道のりがきちんと提示されていたことです。
主人公の森嶋帆高は、よくわからない(劇中で明示されないので、本当によくわからない)理由で、家を飛び出して東京にやってくるところからスタートします。そこで彼は、単純に一人で生きる厳しさや、生きるために必要なコストを様々な場面で痛感します。
船から落ちそうになったところで助けられた人に飯をたかられたり、子供に貸す宿はないとたらい回しにされたり、道端で途方に暮れていたところでチンピラに絡まれたり。
東京という、普段自分がいる場所から遠く離れたあこがれの場所でも、決して何もかもが光り輝いているわけではないと知った彼だからこそ、大好きな人を取り返すために支払う代償も必要であるとわかった上での選択をしているわけです。

ちなみに、後日談のようなパートで彼はこのことに関して、自分のせいでこうなってしまったという自責の念があることを隠すことができていませんでした。これに対して、周囲の大人は「お前一人でこんな事ができる訳がない自惚れるな」や「もともと江戸はこういう場所だったから、もとに戻っただけ」という救いを提示してくれます。
その一方で、陽菜と再会するときには「これは自分で選択したことだ(だから陽菜を取り戻すことができた)」という、ともすれば開き直りのような結論に至ります。
大人たちが提示した救いは、悪く言うのであれば諦めです。世界というのは人一人の力でコントロールできるものではなく、ただ起こったことを受け入れるしかない。大人になるというのはそういうことだ、という経験から来ている言葉です。
ちなみにこの、世界、この作品で言う「天気」は本来神の気まぐれであり、我々人間はそこに住まわせてもらっているだけだと言う考え方は、陽菜の晴れをもたらす力に関するお話の中に混ぜ込まれています。このへんは後で振り返って、物語のオチに対する大人サイドの感情を最序盤で入れてきてると気づいた瞬間に変な声が出ました。
個人的に、新海誠監督作品といえば、こういう「どうしようもなさ」や「歯の隙間に何かが残っている気持ち悪さ」が印象的だったので、こういった側面を逃げずにキチンと描いているあたりがやはり流石だな…となってました。

帆高の考え方はその真逆です。
世界、ないしは天気という大きな力に逆らうことで、大きな代償を支払ったが、その引き換えに彼自信の大切なものを守ることができたというのは、彼にとって大きなことのはずです。確かに、それのために払った代償を「どうしようもないことだ」、「お前のせいじゃない」と切って捨てられるのは、彼からすればとんでもないことでしょう。究極的には、彼の決断の否定にも繋がりかねません。前述の内容と比較すると、帆高の考え方は徹底して自分のために突き進むことで、何が得られるのか。そのためには、警察だろうが世界だろうが、なんでもぶつかってやろうじゃないか。という、子供じみた情熱の結実が、この作品の結末にもなっているわけです。

この辺の、決して交わらない感情を同時に描いているなと気づいたあたりで、見ながらあほみたいに泣いてました。
さて、ここまで話すと、やっぱもう一個書きたいことがあります。

・「この物語を見ている大人」の代弁者である須賀圭介
個人的には、帆高の物語よりもこの須賀さんの描写のほうが刺さりまくってずっと泣いてました。
須賀は、作中の最序盤から登場するサブキャラクターで、帆高が東京に向かう船の甲板から落っこちそうになったところを助けてくれた。という登場の仕方をします。
どこか胡散臭い雰囲気をまといながらも、家出をしてお金も住む場所もない帆高に仕事や住まいを提供してくれる、頼りになるお兄さん(なお、中盤で意外と帆高から利益を不当に巻き上げていて、わりとそうでもないことが明らかになる)という立ち位置です。

端的に書いてしまうと、この須賀は「この物語を見ている我々」、もっというと「大人になってしまった帆高」だなと感じました。
過去に奥さんを亡くし、実の娘とも引き離されて生活することを余儀なくされている須賀は、なんとか娘と一緒に暮らすことはできないかと、懸命に道を探っている描写が何度もなされます。しかし、祖母から「お前のような人間に」とその度に門前払いを食らっている。というのも同時に描写されています。
要は、須賀は「世界と戦って大切なものを取り戻した帆高少年」と対象的に「世界と戦ったが、結果が伴わず徐々にくたびれてしまった大人」として描かれます。

その結果須賀は、帆高が銃所時などの容疑で警察に追われる立場になったときに、自分の都合を優先して、帆高を自身の身の回りから追い払います。また、終盤のシーンでは陽菜を取り戻すべく目的地へと突き進む帆高の前に現れて「いい加減大人になれ(無理なんだから諦めろ)」という言葉を投げかけます。

正直、このあたりの須賀の言動は「もし仮に私がこの世界の須賀の立場にいたら、全く同じことをしただろうな」という気持ちになりました。
おそらく、この映画を見た中高生くらいの世代は帆高のひたむきさに心を奪われることでしょう。しかし、私は須賀の一つ一つの行動の生々しさにグサグサと心を刺されていました。さっきの話と少しかぶりますが、子供じみた光り輝く情熱と、それを見る大人が感じてしまう屈折の両方を同時に、かつ丁寧に描いているのはもはや言葉も出ませんでした。

帆高のことを聞きたいと言う理由で、須賀の事務所にやってきた刑事の「彼のひたむきさが羨ましい」と言う言葉に涙してしまった須賀。彼はきっと、帆高の真っ直ぐな情熱に、過去の自分を照らし合わせていたのかもしれません。そんな須賀が帆高に「諦めろ。大人になれ。一緒に謝ってやるから」というシーンなんかはもう

それお前、もはや自分にいってるよなぁ!?

と、ぼろぼろ泣いてしまいました。

ですが、そんな須賀にもほんの少しだけ、まだ世界と戦う気概が残されていました。
陽菜を救うことができる(であろう)場所まで目と鼻の先というところで、あわや警察に確保されそうな帆高を、自身のその後を顧みずに救い出します。
このあたりは、単純に大人をそのまま描いて終わりではなく、ちょっと勇気で変えられるかもしれないんだから、いざというときは頑張れよ。というメッセージのようにも感じました。
ちなみに、須賀はその後バッチリ手錠されて警察にドナドナされます。まあ当然だね。


といったことを考えながら映画を見ていて、お家に帰ってからパンフレットを見たのですが…

新海誠監督のインタビューでほとんど同じようなこと書いてある!!!!!!信頼!!!!!!!!!!
え!!!!!!!!!っていうわざわざ私がなんか書かんでもパンフレット読んでもらえばよくね!?!?!!?!?!?!?!?

ってなりましたが、まあ一応アウトプットするのが好きな人間なので、感じたことをつらつらと書いておきました。

ただまあ、新海監督…君の名は。のときの心ない批評も見た上で、言葉としては大人なコメントをしながら
うるせ~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!しらね~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!FINAL FANTSY

みたいな感じだったんでしょうね多分。
じゃなきゃ、こんな作品ぶつけてこないよまじで。
私は超面白かったけど、「君の名は。2」だと思って映画館に来たパリピたちが人柱になってくれた感じですね…

なんかわりとまだある気がしますけど、この辺で終わります。

かいさん!!!!!