3本ならばほどけない永遠の絆『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』の感想

こんにちはぬこもやしです。
公開から一週間ほど遅れてしまいましたが、ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-を見てきました。



まぁ~なんといいますか…

もう、クッッッッッッッッソ泣いてしまいましたね。

右隣は本編始まってからもコソコソ喋り続けるアベック。左隣は同じく始まってもスマホいじるクソ大学生という、考えうる中では下から2番目くらいの劣悪な席でしたが、そんなん軽くぶっ飛ばすくらいの名作でした。

一応こちらは、あの京都アニメーションが制作したTVアニメシリーズ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の完全新作アニメーション映画です。
戦争という環境に翻弄され、全てを失った少女ヴァイオレットが、手紙の代筆という仕事を通じて様々な人の気持ちや愛に触れ、成長していく。というのがTVシリーズの大まかな流れなのですが、今回はそれの続きの物語に当たります。
一応、アニメを見てなくても本作品のメインキャラは完全に新キャラのため、割とどうにかなります。なりますが…後述しますが『できればTVシリーズを見てから』行くことを強くおすすめします。というか、TVシリーズがそもそもアホみたいに面白いので、おすすめです。
1~6話、7~9話、10話、11~最終話あたりがひとまとめなので、もし途中で休憩するならこのへんで線を引いていいので、順番に見ていってください。個人的には10話がもう言葉にならんくらい面白かったです。

ということで、こっからは本作品『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』の

ネタバレ

をガンガン突っ込んでいきます。
大丈夫という方のみ、ここからもお付き合いください。

























ではいきますよ。


・いくつもの線が絡み合うストーリー
この作品は主人公のヴァイオレットを中心とした物語、というわけではなく、いくつもの登場人物同士の関わりが同時に並行していることが描かれます。


一つは、キービジュアルにもあるヴァイオレットとイザベラ・ヨーク。この作品自体も、イザベラのもとに、淑女としての作法を教えるためにヴァイオレットが家庭教師として特別に派遣される、というところからスタートします。
最初こそ、ぶっきらぼうにイザベラに拒絶されるヴァイオレットでしたが、少しずつ打ち解けていく中で親近感のわく境遇であったりすることがわかり、ただの仕事としての関係だけではなく、ヴァイオレットの初めての「友達」となるまで二人の関係は変化していきます。ここの描写が非常に絶妙で、この作品の醍醐味である繊細な色使いや、決して大げさではないが見る者に確かに伝わる登場人物の感情表現に一気に引き込まれます。


一つは、イザベラと友だちになったあとのヴァイオレットと、テイラー・バートレット。物語の序盤で、実はイザベラは孤児であったことや、同じく捨て子だったが一緒に生きることを決めた妹がいることが判明します、その、イザベラの妹がテイラーです。
彼女は、後述するとある出来事をきっかけとして、ヴァイオレットのもとを訪ねてきます。そこで、ヴァイオレットのいるC.H郵便社で働かせてほしいと懇願してきます。その様子を見たヴァイオレットは、大切な友達の妹だから、という理由で一緒に頭を下げるのです。ここは物語序盤にイザベラとヴァイオレットが確かな絆を培ったからこその流れであり、ヴァイオレットが誰かからもらったものを、別の誰かに返すシーンになっています。


そして、もう一つはC.H郵便社のポストマンであるベネディクトとテイラーです。テイラーは、物語序盤でヴァイオレットが書いたイザベラの手紙をテイラーに届けていたのです。テイラーはその時のことをはっきりと覚えていて、「幸せを届ける仕事」としての郵便配達人になるべく、ヴァイオレットのもとを訪ねるのです。
またその後、テイラーとベネディクトが一緒に仕事をしていく中で、毎日同じ仕事の繰り返しで自身の仕事に飽きを感じ始めていたベネディクトに、仕事に対する誇りややりがいを取り戻してくれるのがテイラーの言葉であることも、非常に印象的でした。

と、ちょっとこんがらがってしまうような感じですが、誰かが誰かに渡した思いが、更に別の誰かにつながっているという、手紙や郵便をモチーフとしたこの作品らしいストーリーがこの映画には展開されていきます。


・感涙不可避のクライマックス
この作品には多くの示唆的な言葉が出てきます。その最たるが、タイトルにもある「3本ならばほどけない」というものです。
テイラーがヴァイオレットの髪型に憧れて三編みにしようとするのですが、髪を2つの束にしてぐるぐると回すだけですぐに解けてしまいます。それを見たヴァイオレットが言うのが、このセリフです。
ここに関してはもう、すぐにイザベラとテイラーとヴァイオレット(あとついでにベネディクト)のことだな、とピンときてしまいました。
本作品はイザベラとテイラーの絆が大きなテーマとして描かれるのですが、自身の人生を売ってテイラーを守る決断をしたイザベラ。それに守られるだけだったテイラー。この二人だけでは、この作品の結末にたどり着くことができなかったでしょう。ですが、もう一本の絆であるヴァイオレットが二人の絆を再び結びつけることができる、というのがこの作品の大きなオチになっています。

ということで、クライマックスの話です。
物語終盤では、ヴァイオレットに背中を押されたテイラーがイザベラ、ここでは当時の名前であるエイミー・バートレットに手紙を渡すことになるのですが、ヴァイオレットが家庭教師に行ってからすでに4年が経過した頃には、彼女の消息はつかめない状態になっていました。
そこをベネディクトが根性で探し出し、テイラーの手紙を届けに行くというのがこの作品のクライマックスです。
テイラーが頑張って覚えた文字によって宛名が書かれた手紙を受け取ったイザベラは、その瞬間にエイミーの顔に戻り、彼女が自身の人生を投げ売ってでも守りたかった生きる希望が、たしかにつながっていたことをようやく知るのです。
ここで、重要なのは安易にヴァイオレットを出さずにベネディクトが手紙を届けていることです。彼女の仕事は本来は手紙の代筆であり、手紙を届けることそのものではありません。ベネディクトが届けるのはお仕事上正しいのですが、本当にそれだけではちょっと味気ないものになってしまいます。ですが、ここで手紙を届けたベネディクトは、エイミーからヴァイオレットに、ヴァイオレットからテイラーに、そしてテイラーから…と渡ってきたたくさんの思いを受け取っている人物の一人でもあります。
決して画面にヴァイオレットはいなくても、彼女たちの思いは確かにベネディクトを通じてエイミーに届いている、というのがわかるストーリーが最後の最後に爆発するわけです。
もう、ここらへんはもう本当にわけわからんくらい泣いてました。

しかも、ここでテイラーはベネディクトと一緒に来たのに、エイミーの前に姿は現さないんですよね。
きっといつか、一人前に郵便配達人になって、エイミーに守ってもらった人生をしっかりと全うできる年齢になったころに、再会するんだろうな…という想像の余地まで残してるわけです。
いやぁ~…完璧ですね…

TVシリーズを見てればわかる小ネタ
田所あずさ、ギャラ確認


失礼しました。ルクリアたんが出てしまいました。

閑話休題、最初に書いた通り、一応TVシリーズを見ていなくても楽しめるのですが、そもそもヴァイオレットがどんな道のりでイザベラの家庭教師をできるようになってきたのか、という彼女の成長を知っているかどうかだけでも、前半の印象は大きく変わると思います。
体調を崩したイザベラの横に徹夜でついていたヴァイオレットが、あくびをするシーンなどは、知らなければそりゃ眠いよなくらいで終わりですが、TVシリーズを知っていると

「ヴァイオレットちゃんが!!???!!?!!?!仕事中に?!?!!!!!!!!!!!!?!?!???人前で!!?!?!?!?????!!?!?あくびを?!?!?!?!!!!!!?!!?!?!!????????!?!」

くらい重要なワンシーンになります。

また、このシリーズによく出てくる「届かなくていい手紙なんてない」というセリフや、ヴァイオレットが身の上話をするシーンなども、TVシリーズを見ているかどうかで、ただのセリフとなるか、背景を踏まえた上での説得力ある言葉になるかが分かれるのではないでしょうか。

・10000000000000点満点のED主題歌「エイミー」
EDで流れる主題歌「エイミー」は、もうなんというか…見た上で歌詞を見てください。
それ以外言うことないです。
前半がエイミー。後半がテイラー視点の言葉になっていて、感想には「3人」の女性コーラスが乗っています。作中に描かれた3本の思いがしっかりと編み上げられていることを、最後まで余すことなく伝えてくれる、名曲です…
もう、いいですよね本当に。最後の最後にこんなん聞かされたら、そら誰も途中で帰れませんて…

・新作劇場版、待ってます
すでに告知されている通り、ヴァイオレット・エヴァーガーデンは新作劇場版の制作決定と、先日の事件に伴う公開の延期が発表されています。これに関する言及はここでは避けますが、公開されている情報から、彼女たちの世界の技術発展とともに、自動手記人形や郵便配達の仕事が徐々に不要なものになりつつ有る、という導入であることは容易に予想ができます。
これは結構昨今の情勢を反映していると思っていて、今ある様々な仕事が今後別のなにかに取って代わられるのでは?ということは日々色々な場面で言及されています。
そういった意味では、かなりタイムリーなテーマだなと思います。ですが、だからこそ変わらない人の思いや、仕事というものへの意義を真摯に描くこの作品が人の心に刺さるのかな、と帰りながら「エイミー」を無限に聞きながら考えていました。いくらでも待ちますので、公開されるのを楽しみにしています。


と、こんなかんじでしょうか。
ちょっとでも今日私が得た感動が伝われば幸いです。

以上、解散!!